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「逃げるって? どこに逃げるつもりだ? 当てはあるのか?」
「この刑務所以外のどこかだよ!
俺はこんな所に居たくない!
もう、うんざりだぁ――! 」
「俺はここにいた方が良いと思うよ」
俺は刑務所の内外に設置された、監視カメラの映像を映しているモニターの1つを指差す。
そのモニターは、刑務所の門の直ぐ外を映していた。
そこには脱獄した囚人数人が、ゾンビになって映っている。
「こいつらは丸腰で逃げ出したから、ゾンビになったんだ。
俺達は武装している。
看守棟の武器倉庫に行けば、弾を豊富に手に入れる事が出来るし、重武装して逃げる事も可能だ」
「コーヒー飲むか?」
俺は空になったカップを指し示し尋ねる。
「え? ああ…………飲む」
奴は奴の話しとは関係ない問いかけに戸惑いながらも、返事を返してきた。
俺は所長室に行き2ツのカップにコーヒーを注ぐ。
両手に1ツずつカップを持った俺は、監視室の中をウロウロと歩き回っている、1週間程前にこの刑務所に配属されたばかりの若い看守に、片方のカップを差し出し話しかける。
「まあ座れ。
逃げ出すにしろ籠城するにしろ、時間はたっぷりあるんだ。
コーヒーを飲みながら、ゆっくり検討しようぜ」
若い看守はコーヒーの香りに癒されたのか、殺伐とした表情が穏やかな表情になり、椅子に腰掛けた。
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