プロローグ

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プロローグ

「好きです!」   放課後の屋上。後輩の女の子に告白された。  その子は顔を伏せて、ぎゅっと手を握っている。  普段だったら喜べる状況なんだけど、今はそうもいかない。  何、この子、百合なの?  これって傍から見たらガチ百合なんだけど。キマシタワー。 「えっと。私とあなたって、初対面だよね?」  正確には今日の昼に会ったばかり。出会い頭にいきなり手紙を渡されたんだ。  ファンシーな便箋に入った、可愛い手紙。  書かれていたのは、簡素な言葉。 『放課後、高校棟の屋上に来てください。ずっと待ってます』  うん。だから手紙見た段階で、なんとなく告白されるっていう展開は予想してたよ。この子の態度は完全に恋する乙女のそれだったし。  そして屋上で待たせるのも悪いからと行ってみたら、案の定告白された。 「そうなんですけどわたし、ずっと涼香さんのこと見てて。かっこいいなって思ってて……。憧れてたんです!」  とにかく、断らないと。  でもどうやって。  この子を傷つけるわけには行かない。  どうにか、やんわりした言い方で。 「ごめん。やっぱり私、あなたの事全然知らないし。付き合うわけにはいかない、かな」  僕がそう言った瞬間、女の子の目にはみるみる涙が溜まっていく。  まずい。フォロー入れないと。 「あ、でもこれから友達からはじめようよ。ねっ?」  ありきたりだけど、他にいい言い方思いつかなかったのだから仕方ない。  女の子は涙を拭きながら。 「じゃあ、先輩のメアドとLINEID教えてください!」  そう来るか。まあ友達になろうとか言ったのは僕の方だ。やるしかないだろう。  どうする。ここでスマホ持ってないなんていうあからさまな嘘ついたら、またこの子を泣かせることになってしまう。  慎重にいこう。一歩間違えたら終わりだ。  僕はポケットからスマホを取り出す。 「先輩、携帯の色は紺色なんですね。かっこいいです」  よかった。この子は僕のことをかっこいいと言っているからか、携帯の色について不審に思われることはなさそうだ。 「私LINEやってないからとりあえずメールアドレスを……。赤外線の調子悪いから手動で入力するね」
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