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「支払いは後で秘書がする」
カウンターの中で黙ってグラスを磨くバーテンに告げた。
そして、彼はそのまま私をバーから連れ出す。
自分の意思に反して、強引に桐生社長に引きずられるように歩かされた。
足に馴染まないパンプスを履かされ、右の踵は靴擦れ。
歩く度に痛んだ。
薄暗い光の中を歩いていると突然、まばゆい光が視界を眩ませた。
硝子越しに見えるのは東京の夜景。
この夜景の為にワザと通路の光を落としているだと気づく。
「ロマンチックだろ?」
ずっと私の手を握っていた桐生社長の手が離れる。
私は安堵したが、素早く肩を抱かれ、抱き締められてしまった。
彼の馴れ馴れしい手に驚いたが、私は抵抗するかのように彼の革靴を思いっきりパンプスで踏みつける。
「お、お前!!?」
彼は私からカラダを離した。
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