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「もう食べなくていいよ。お代はいらないから帰ってくれ」
ラーメン屋の店主は、カウンター席でまだラーメンを食べている女性客に冷たく言った。女性客は何故といった表情で店主を見返す。
「あのね、あんた臭いんだよ。香水臭いの、わかる? それじゃあ俺がせっかく作ったラーメンの薫りが楽しめないだろ? 他のお客さんにも迷惑だからさ、悪いんだけど帰ってよ。もう二度と来なくていいから」
他の席の客達はそんな店主と女性客の様子を見て見ぬふりをし、次に店主の標的が自分にならない事を祈りながら、ただ黙々とラーメンを食べた。
女性客は目に涙を浮かべて、「すいませんでした」と一言告げると店を出ていった。店主は舌打ちをすると、女性客の食べかけの丼をかたずけ、その後の店内には重苦しい空気が漂うのだった…。
この店は頑固で堅物な店主が経営する事で有名なラーメン屋で、携帯の着信音を鳴らした客、私語等々、自分の気にくわない客を店主が追い返す事もしばしばあるのだった。
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