一日目

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ふぅ、、、もう少しで五時、退屈でやりがいのない仕事から解放される時間。 PCの画面と壁にかかっている時計を交互に見る。 (あぁ早く五時にならないかなぁ) 五時の鐘が鳴ると誰よりも先に席を立つ。 PCの電源が落ち切るのを見届けもせず会社を後にする。 急いで帰っても待っているのは愛猫のみ、急がなくてはいけない理由など何処にもないのに彼は家に帰りたくてたまらない。 地下鉄にのり満員に近い車両では痴漢と間違えられないために吊革に両手をひっかけて車内に貼られている広告をぼんやり見つめて時間をつぶす。 最寄り駅に着くといそいそと迷うことなくいつもの道を進んでいく。 自宅に着くまでの道にはいくつかスーパーがある。その中で五時から20円引きをしているスーパーへ吸い込まれるように入っていくと、割引シールの貼られたものの中から今日の晩御飯を選ぶ。 食べ合わせなど何も考えずに安さを重視して思いのままに手に取る。 (よし、こんなもんだな) から揚げとハンバーグ、メインばかりじゃいけないとほうれん草のおひたしを選んだ。 レジで504円を払い商品の袋を受け取るとわき目もふらず店を出たあとは脇目も振らず自宅へとまっしぐら。 カチャカチャと自宅の鍵をポケットから出し慣れた手つきで鍵を回し扉をくぐる。 バタン! 勢いよく扉を閉めると自分の背後に何故だか気配を感じた、部屋に入ったのは自分だけだ。 誰かが入り込む隙など無かったとおもいつつも気配の強さに負けて振り返って見た。 そこには当然のように誰もいない。 「気のせいだな―――ミーコォ?ただいまぁ」 愛猫の名前を呼びながら寝室へと向かう。 「ミィコォ?」 クローゼットの中からまだ目覚めて間もない瞼で愛猫のミーコが顔をだす。 「お、まだ寝てたのかごめんな、いいよ出てこなくても」 ミーコも彼が帰ってきたことがうれしかったのか、しっぽをピンっ!と立てて伸びをしながらゆっくりと彼に近づく。 その様子をにやにやと見つめていると、ミーコはあくびをしながら彼を見つめる。 「よしよしただいまなぁ、朝ごはんはちゃんと食べきった?」 ミーコのご飯入れを覗くときちんと空っぽだった。 「晩御飯いれとくからねぇ」 通じているのかわからない言葉をミーコに向かって何度も投げかける。 ざらざらとご飯が出される音を聞き、お腹が減っていたのかミーコが駆け寄ってくる。
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