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部屋着に着替えた後、玄関を見つめているミーコのそばまで行き彼女の目線と同じ高さにしゃがみこみ、視線を送っている場所を見つめてミーコが何を見ているのか探る。
一分、二分じーっと二人でその場所を見つめるが、彼には何も見えない。
こういう時、彼は思い出すことがある、猫の聴覚は人間の何倍もある。
だから同じアパートやマンションの中で暮らしてるほかの人達の生活音が聞こえる。その生活音の中に自分の気になる音があると聞こえてくる場所をじーっと見つめてしまうということ。
「んー、そんなに気になる音がきこえてるの?」
ミーコの瞳を覗き込む、彼女は彼の顔が邪魔だったようで優しい猫パンチをくりだす。
「痛って…そうですか邪魔ですか、はいはい」
彼はミーコをその場に残し、キッチン兼居間で買ってきたものを温める。
電子レンジのなかでふつふつとデミグラスソースが熱せられていくのを空っぽの頭で見つめていると、廊下の辺りからミーコの声が聞こえた気がして覗き見る。
ミーコは相変わらず玄関を見つめている…
「気のせいじゃないかな?ミコタン?ミー?」
彼女の気をそらせたくて何度も名前を呼んでみるがなかなか振り返ってくれない。
「ミッチャン?ミコミコ?ミィィイ?!」
呼んでも呼んでもこちらを向かない彼女の気を何とかこちらにそらしたくて、ミーコに近づき撫でる。
「なぁにみてるのかなぁ?」
いつもなら彼の掌に頭をぐりぐりと押し付けてくるほどの甘えたさんの彼女が今日は彼の手をぬるりとよける。
「あらら…そんなに気になるのか、こりゃあ何してもだめかなぁ?」
独り言なのか、ミーコに言っているのかわからない微妙な口調でその場を去る。
おかずをパックのままでテーブルに並べ冷凍ご飯を温めながらTVを付ける。
ご飯をお茶碗によそうといつもの位置にすわりご飯をたべる、いつもならこのあたりでミーコが自分もご飯を食べるために彼の隣に座り無言の圧力をかけてくる。ミーコのご飯の容器を自分の隣に置き食事を始めるも彼女の姿が見えないことに違和感を感じる。
どんなことがあっても自分がご飯を食べ始めると、私も食べなくちゃ!といそいそと食卓につくはずの彼女が今日は居ない。
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