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一時間ほどガラス越しに女を見ていただろうか、女は全く動く気配を見せない。
あの女はあそこから動けないのかもしれないと思うと、女への恐ろしさが和らいできた。
廊下へと続く扉をあけるとミーコはまた女の足元までいき女の顔を見つめていた。
警戒心のつよい猫があそこまで近寄るってことは、俺たちに害を及ぼすようなものじゃないはず。
彼は恐る恐る女に近づくと人差し指でつんつんと触ろうとする。
指先にはなんの感触もない、目に映る自分の人差し指は女の体にずぶずぶと飲み込まれている。
「やっぱりお姉さん幽霊なの?」
全く反応を示さないと分かっているはずなのについ話しかけてしまう。
女は微動だにしない。
この幽霊は昔からここにいたのかもしれない…たまたま今日気がついただけで…地縛霊?
そう思うと居てもたってもいられなくなった、PCの電源を入れ検索エンジンに自宅の住所を入れ、スペースを空けて事故物件と打ち込む。
検索エンジンに引っかかったサイトのトップには全国の事故物件をまとめた有名なサイトが表示されている、クリックをするとそのサイトには全国津々浦々の事故物件がご丁寧に写真付きで載って居た。
一時間ほど探し回ったが自分のアパートはどこにも載っていなかった。
「てことはあの人はここで亡くなった訳じゃないのかな?」
検索エンジンに地縛霊と打ち込む。
”地縛霊とは、亡くなった人がその場所や部屋などに強い思いを残したまま亡くなってしまい、亡くなってからも思いが強すぎてその場所から離れられなくなってしまった霊体。”
そんな言葉が出てきた。思いが強すぎて…この部屋に何か心残りがあるのか?
おそるおそる廊下に出て玄関にいる女に話しかける。
「この家で何かあったの?」
女は無反応だ。
「もしかして俺が君に何かした?」
ピクリとも動かない。
このままこの場所に居られるのは居心地が悪い。どんな思いでこの場所に居るのか、それがわかれば身の守り方も決まるというものだ。
玄関で棒立ちの女にいったい何があったのか、彼には知りようがなかった。
何を話しかけても無反応の彼女。対処法を見つけることに気を取られ時間も忘れてPCとにらめっこを続ける、ふと画面の隅にある時計が目に入った。
「二時?!!!やっべ明日も仕事なのに」
あの女のことも気になるけれど、明日の仕事のためにも眠っておかなければ、危害を加えてきそうもないし自分に触れない事がわかり、女に対する恐怖心も薄らいでいた。
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