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「おー、帰ったかチャーコ。坂間さんちのチャボくん泣いてたんだって? 悩み事かぁ?」
「チャボくんとは今日は遊んでないプギ! そんなことより、アタチ騙されないから! 二人とも、ひ、引っ越すんでしょ……アタチを、置いて……」
最後は蚊の鳴くような小さい声になってしまう。
でも案の定、二人の顔色がサッと変わった。
「なんだ、お前。昼間俺らが話してたの、立ち聞きしてたのかよ……」
低い声で凄まれてプギッと喉が鳴る。でももうアタチは決心したんだから。
だからそんなに、怖い顔しないで……。
(気にしなくていいよ、アタチこれを機会に自立することにしたの……今までありがとね……。よし、これだ。このまま言えばいいんだ。頑張れアタチ……!)
でも声が出てこない。
言わなくちゃいけないのに、どうしてもアタチは自分からさよならが言えない……!
「しょーがねーなぁ。じゃあ見せてやるよ」
何を思ったのか、カイはリビングへと一旦消えてすぐに戻って来た。その手にはやけに立派な装丁の薄い本のような物を携えている。
「見よチャーコ、これを! ドン!!」
そう言ってカイが目の前に広げて見せたのは、反面は英語らしき記述で埋められた公式文書のような物。そしてもう反面にある印刷された写真は……。
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