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さわさわと霧のようなあめが降る。
やわらかくてやさしい、ふんわりしたあめ。
でもアタチの心はやっぱり哀しいまま、キュウゥゥ……って小さく潰れてるみたい。
(家出なんて……初めてだプギ……)
あめの匂いを嗅ぎながら、アタチは灰色にけぶる原っぱ公園を眺めた。
いつも遊ぶ巻き貝の滑り台の中だから雨露はしのげる。もしかしたらコレが今日からアタチのお家になるかもしれない。
「――あ、チャーコだ! チャーコばいばーい」
前の道から、お母さんと相合い傘で歩く凛太郎くんが手を振ってきた。
「あら、五丁目のカイサルさんとハチさんちのこぶたちゃんね。いつも凛太郎と遊んでくれてありがとー」
お母さんもニコニコと声をかけてくれる。
「プギー」
アタチも短い手をフリフリしてごあいさつ。
ごあいさつは良い子の基本だっていつもカイとハチに言われてるから。
(……いいなあ、凛太郎くんは。やさしいお母さんに飼われてて)
いや、彼は人間だから飼われてるってのは違うだろう。でもアタチは……こぶただからやっぱり飼われてる。
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