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この世界に生まれた時、気が付いたら人間のカイとハチがそばに居て、当たり前のように一緒に暮らし始めた。
最初は非常食として引き取ったらしいけれど、結局アタチの愛らしさにほだされて食べるのはやめたみたい。
そして今になって……二人はアタチを捨てることにしたようだった。
『――……ええっ? それナイスじゃん、カイ』
『しーっ! チャーコに聞かれたらどーすんだよ』
そんな感じで始まった、カイとハチのヒソヒソ話。たまたまトイレで頑張ってたアタチに、その会話は聞こえてしまった。
『ごめんごめん。でもさ……そしたらかなり嬉しい。チャーコってベッドで寝るくせに、ゴロゴロする時は寝藁じゃん? あれ、替えるの面倒なのよね』
『だろ? アイツ、遊ぶのは好きなクセにトリュフ探しは嫌いだし。そうなったら、いらなくね?』
『いらない、いらない。なんの未練もなーい』
『だからさ、チャーコには内緒にしとけよ。すぐには無理だけど、いつでもパッと引っ越せる準備だけはしとこうぜ』
膝の上に置いたひづめがカタカタ震える。
(アタチ……もう要らないの?)
つまり二人は近々、引っ越しを計画しているということ。そしてアタチは……置いて行かれるらしい。
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