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アタチがプイッと横を向くと、ヌコリンは不思議そうに小首を傾げた。
「ふうん。じゃ、俺帰るわ。またなー」
「ばいばーい」
ふわふわのあめの中、濡れるのも構わず軽やかに小さくなっていく黒い後姿。
なんというかヌコリンは何事にも動じることなく、いつも飄々としていてカッコイイ。
これが野良の貫禄というモノなのだろうか。
「あ……あめ、止んできた」
なんだか無性に走りたくなった。胸の中に沈んでるモノ、走ったら全部きれいに落っこちないかな。
(じゃあ……かくれんぼの丘まで)
アタチは巻き貝の滑り台から飛び出して、原っぱ公園を全力で駆け抜けた。
目指すは公園の奥にある小山、通称『かくれんぼの丘』。
穂先の長い野生の草花に覆われていて、ヌコリンや他のお友達ともよくかくれんぼをするお気に入りの場所。
草花を掻き分けて、シュタタタと坂道を登る。
どうしてなの? どうしてアタチ、捨てちゃうの?
いつから要らないと思ってた……?
(あっ……!)
違和感があると思ったら、前足のひづめが欠けている。ちょっとだけ、痛い。
ゆるゆると足を止め、アタチは花畑から顔を出してお家の方向を振り返った。
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