①こぶたのまーち

こぶたのまーち

（そうだよね……二人にはひづめなんかない。なにもかも、やっぱりちがうんだプキ……）

　三人揃ってブンタカタ♪　ブンタカタ♪

　楽しいマーチに合わせて歩いてきた。でも、いつも先に行ってしまう二人をアタチは小走りで追いかけてたような気がする。

　歩調が違う、歩幅も違う。

　だって二人は人間、アタチはこぶた。
　ずっと一緒に歩いて行くなんて、最初から無理だったんだ。

（アタチ……お家を出よう。ひとりで生きていこう……）

　カイとハチが大好きだから。
　これ以上、邪魔だなんて思われたくない。

　ふと見ると、足もお腹も泥だらけ。これからはこういうのも自分で拭かなきゃいけないんだ。

（でもきっと大丈夫……ヌコリンだって野良だもん。なんなら、しばらくはヌコリンとこに転がり込んでもいいし）

　あめ上がりの濡れた風がアタチの鼻を優しくなでる。
　花の香りも、土の匂いも、がんばれチャーコって言ってくれてるみたい。

「よし、帰ろう。帰ってちゃんと、さよならを言わなくちゃ」

　お片付けも苦手で、トリュフ取りも嫌いで、叱られていたばかりのアタチだけど、ごあいさつだけはいつも二人は褒めてくれた。