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「なにやってんのアンタたち。もうすぐお医者さんがいらっしゃるんだから、生活棟に戻っていなさいよ!」  キツイ口調で告げる委員長こと福本紫苑。  ツインテールというんだろうか、年相応におしゃれを気にしているらしい紫苑はいつでも長い髪を耳より高い位置で左右でまとめた髪型をしている。  紫苑も光井学級に所属する生徒であり、彼女も桜子や大森と同じく生体兵器として身体を改造されているのだ。 「政府の方も来られるんだから、ピシっとした格好をしなさいよ」 「ふん、ちゃんとしたからって何か俺たちに特典があるのかよ?」  大森が唇を尖らせてそう返す。 「だいたい、いい子ぶったって無駄だぜ。あいつら政府の人間は俺たちをただの道具としか見てねえんだからよ」 「そうよ。だから、戦争の道具としか見られていないあたしたちが、ちゃんとまともに見てもらえるチャンスなのよ」  紫苑が委員長と呼ばれる所以は、こうした規律や時間などにうるさく、物事をクソ真面目に考えるところだ。  光井学級の者だけでなく、施設内の他の子供たちにも何かにつけて口やかましく小言を言うのである。  何かにつけて細かい紫苑の攻撃の矛先は、だいたい大雑把な気性の大森に向かい、やかましく注意されるたびに彼は嫌そうな表情を浮かべるのが常だ。 「他の皆がしっかりしても、あんたみたいにルーズだと全体の評価が下がるのよ」 「ああ、わかったわかった。戻るよ。行こうぜ桜子」  露骨にウザそうな態度で応じ、大森は一足先に生活棟のほうへ向かった。  その背中に続くように桜子がハンモックから飛び降りた。  紫苑の次なる怒りの矛先は、桜子に向かった。 「待ちなさいよ」  呼び止められ、桜子は顔だけ紫苑に向けた。 「この際だから言っとくけど、あんた、未央先生や他の職員の方々にもずっとそんな態度だけど、よくないことだと思わないの?」 「…」  桜子は黙ったままで、何も返答しない。  こちらの話を聞いているのか聞いていないのか分からないこの態度に、紫苑は毎度イライラさせられる。 「聞いてるの? それにあんた、ご飯のときも皆と同じ食堂で食べないじゃない。皆と違うメニューだからって、あんただけ違うとこで食べていいわけじゃないでしょ? ヴァリアント討伐をたくさんしているからって偉いわけじゃないのよ桜子」  先を歩いていた大森も立ち止まり、振り返って紫苑と桜子の会話(といっても会話は成立などしておらず、紫苑の一方的な独壇場と化していたが)を眺めていた。
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