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ヴァリアント。英語での綴りは「variant」だ。
日本語に訳すと「異なる。変種」などの意味であり、同じ名称を持つ奴等もこの地球に存在する生命体とはあらゆる点で異なっている。
人類の脅威たるその存在が現れて人々に認識されたのは現在からおおよそ四十年ほど前と言われている。
長い地球の歴史のなかで文明の陰に隠れて時おり何かで既存の生物のどれにも当てはまらない不可思議な姿をした未確認生命体の存在が目撃され、古くからまことしやかにささやかれていた。ヴァリアントも最初はそんな類で時おりオカルト好きな民衆の間で小さな話題になるという程度のものであった。
ちょうどその年に世界各地で地殻変動による巨大地震が多発して数年後のことだった。
今まで日陰のオカルトまがいの作り話とされていたヴァリアントの存在が一気に世界中に認知されることになる出来事が起きた。
七月七日、ちょうど七夕の日に地球上の海の底から大小サイズも姿もさまざまの数多のヴァリアントが上陸して世界各国の主要都市で人々の前に魑魅魍魎に匹敵する醜くおぞましい姿を晒した。
パニックに見舞われる各国の軍が出動したが、ヴァリアントの百鬼夜行は食い止めることは出来ず、道路も建物もあたり一面が消防車のホースで水を撒き散らしたようにヴァリアントに殺された人たちの真っ赤な血液で汚れたのだ。
たった一週間の間にヴァリアントによる世界各国で大勢の民草を喪い都市機能が壊滅寸前にまで追い込まれたこの出来事を“血の一週間”として世界は現在まで長きに渡り牢記するに至った。
ヴァリアントは機械造りの怪物然とした外見から、世界の科学者らの間にどこかの国の生物兵器説や宇宙人説などが流れた。
科学者たちの見解とは正反対に、宗教家たちはヴァリアントは神々の使いであると提唱する者もいた。
神が増えすぎた人類を調整するためにヴァリアントを召喚した、だからむやみに深追いするのはよくない、とした自然主義的な意見を誰も聞きはしなかった。
奴らヴァリアントは人類の敵だ。どこかの兵器だとか宇宙人だの神だの仏だのそんなものはどうでも良い。奴らは再び人類を滅ぼしに来るはずだ。
あの地獄。“血の一週間”を生き残った人々はこの世のものとは思えぬ二目と見れぬ悍ましい化け物がもたらした殺戮と破壊をやってのけた強大なる力への恐怖と愛しい家族や友、恋人、故郷の街を奪われた怒りに狂った人々は、あの地獄の一週間のあとも時おり人間たちに牙を剥くヴァリアントに怯え、被害を出しながらもひとつの策を思いついた。
それは人間の身体に生体機械とナノマシンを融合させ、超人的な戦闘力を引き出すことでヴァリアントに対抗する方法である。
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