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「どうしました?」 「私にも見せて、なさい」  仲間のふたりに返事をすることはなく、ドローンの残骸を手の中でこねくり回して観察を続ける。  ヘヴナーたちが武器として持っている射撃装置に共通する銃口や薬室、カートリッジを接続する機関は見当たらない。似たような個所はあったがそれはこのドローンを飛行させるための電力を担う小型のバッテリーを挿入するためのスロットがある。 「小さな生命体が乗って操縦する余地も存在しない。無人で動いているようです。そして単眼があります」 「単眼?」 「レンズ状です。エプシロン様とは異なる」  仲間に説明をしながら花王総統は残骸を弄んでいた手を止め、さながら貴重な骨とう品を調べる鑑定士のように、自らのスリット状の視覚器官に近付けた。  何かを保護するようにカバーめいた部品を爪で破壊し、なかにデータを保存する記憶用のメモリーカードが収まっている。  花王総統はこれを過去にも見たことがある。カメラと呼ばれる風景や瞬間を切り取り画像や動画として念写するためのヘヴナーのポピュラーな装置だ。  これを見て合点がいった。このプロペラを持った飛行物体は空飛ぶカメラだと解釈したのだ。  そこで花王総統が思い出したのは、窓から建物の下の景色を覗いた時に、双眼鏡を持った若い兵隊の顔だ。間抜けに開いた口でこちらに注目していたので挑発のつもりで首狩りジェスチャーをくれてやれば、そいつはすぐに双眼鏡を降ろしてパーマがかかった髪の下で怯えた目をしていたが愉快だった。 「ふはは愉快」  そう言うと花王総統は残骸を思い切り地面に叩き付けてさらに細かい砕片に変え、むしるようにメモリーカードを取り出すと指で上下から力を加えてへし折った。
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