4人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
五月雨のように降る、春の満開の桜吹雪。
ここ、御手洗高校の校門前の桜も、ここぞとばかりに咲き乱れ、春風に乗って舞い落ちる。
その桜吹雪の中、一人の少女が立ちすくんでいた。
銀髪のショートヘアに小さな小顔が包まれ、眠たげな眼差しが、登校中だった僕を捉える。
一目見たら忘れないだろうほどの美少女だろう彼女は、立ちすくむ僕にそっと近寄る。
薄い化粧すらしていない、自然体な真顔で僕を見つめると、彼女は口を開いてこう言った。
「……キャン、ユー、スピーク、ジャパニーズ?」
カタコトで、どこかイントネーションのおかしいこの英語が、今の僕らを形作る一歩だったなんて、この時はまだ知らない。
最初のコメントを投稿しよう!