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テンクイとの話を終え、玄関エントランスから階段を上がり、お兄様の待つ2階の応接室へ向かおうとすると"マリア"と呼ぶ声がした。
「久しぶりだな。マリア」
「まあ!お父様!ご無沙汰してございます」
お父様だった。
相変わらずのしかめっ面ですが、別に怒っている訳では御座いません。
昔から、これが普通の顔なのです。
でもマルには怒っている様に見えたのでしょう。
ササッとわたしの後ろに隠れてしまいました。
「マリア…お父様は怖くないと、ちゃんとそのチビメイドに説明をしてくれまいか…」
「だ、そうですわよ?マル。どんな人にも、きちんとしたご挨拶が出来ないと、テンクイの様な立派なメイドにはなれませんわよ?」
マルは慌てて姿を現して挨拶をしました。
「マリア様の専属メイドのマルと申します。どうぞ宜しくお願い致します」
不慣れな挨拶ではありましたが、お父様は
「うむ。我が娘の世話を宜しく頼む。じゃじゃ馬娘で苦労するだろうが、そなたの様な立派なメイドが側使いにおれば安心と言うものだ」
と、マルを尊重する言葉をかけてくださった。
「ところでマリア。今日はどうしたのだ」
ここに来た理由をお父様に説明をすると、苦笑いして言った。
「お前の兄は、また胃を壊すやも知れんな。お手柔らかにな」
「今度はプライベートな事です。前回の様なご迷惑はお掛けしません。勿論、お父様にも」
「うむ。あの豪快娘のアリシアの事だ。なにかまた厄介な事になってるのは間違いはないはずだ。アリシアの元へ早く向かってやるが良い」
「はい。親友のまるひよこは、わたくしの姉妹も同然ですから」
「うむ。私にとっても娘同然。アリシアの父君、ランペイジ卿には、我がラハルト家は返しても返しきれぬ恩がある。今は亡きランペイジ卿の忘れ形見のアリシアの為なら、いくらでも協力しよう。だから頑張ってきなさい」
「はい。ありがとうございますお父様。それにわたくしの最愛の弟子も巻き込まれていると思われますので、早く行ってあげたいのです」
「うむ。そうしてやりなさい。金の準備は了解した。とは言っても、シスコンのあいつの事だ。既に準備しとるだろうがな」
「はい、頼りになるお兄様の事ですから」
「そうだな…では気をつけて行ってきなさい」
お父様は笑いながら玄関を出て行った。
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