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ドサッと言う音と共に、焦げた臭いが鼻をつき
聞こえてくるのは風にゆれて擦れる草の音だけ。
わたしは、おそるおそる目を開けると、目の前には焦げた化物が無惨にも横たわっていた。
そして、助かったという安堵と突然起きた出来事に
呆然としていた私の耳に次に入ってきたのは
「ごめんね、大丈夫?怪我はない?」
と言う人の声。
同時に視界に入ってきたのは…
全身真っ黒な服に、背中にはマントつけ、先端に宝石をあしらった身の丈ほどの杖を持ち、黒い先の尖った帽子に身を包んだ一人の女性だった。
腰を抜かし、座り込んで言葉もでないわたしに、その黒づくめの女性は、手を差し出しにこりと笑った。
わたしがその手をつかむと、グイッと一気に引き上げられ
「もう大丈夫よ」
と耳元で優しく囁いた。
安心した私の目には涙が溜まってどんどん視界がぼやけていく。
「あなた草だらけよ?」
と、そんなわたしを笑うこともなく服についた泥や草を払ってくれた。
「あ…ありがとうございます…」
命を助けてもらった恩人に、こんなチープな言葉しかでない自分に若干腹ただしい気持ちもあったが
いまはこれが精一杯の言葉だった。
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