マリアさん大激怒の巻き

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次の日の早朝、マルを連れて商用馬車に乗りラハルトの実家へと向かった。 「マリア様、わたし馬車は初めてです」 「そうですか。これから他の街や国へお使いを頼む事もあるでしょうから、しっかりと商用馬車の乗り方を覚えておきなさいね」 「はい!」 なんて偉そうに言ってはいるが、実際わたくしも最近覚えた訳で… 内心はドキドキしている事は内緒だ。 なんの問題もなくラハルトへ到着し、鐘の広場から歩き実家を目指す。 キョロキョロと物珍しそうに周りを伺うマルの手を引き、実家へと到着した。 「ここがマリア様のお家ですか?」 「そうよ。わたしの家よ」 「おっきいですね…」 門の前に立ち呼び鈴を鳴らすと、数秒もしないうちにベテランメイドのテンクイと、その部下達が現れた。 「お帰りなさいませ、お嬢様」 「こんな早朝にすまないわね、テンクイ」 「いえ。久方ぶりにお顔を拝見できるのをを楽しみにしておりました。お荷物をお預かり致します」 「お願いします」 テンクイ達のきびきびとした動きに目を奪われたのか、マルは身動き1つせずに、黙ってその様子を見ている様子だ。 「そちらのお嬢様もお荷物を」 テンクイがマルにそう言うと、マルは首を大きく横にふり 「いえ、わたしはマリア様のメイドです。マリア様のお荷物はわたしが!」 とテンクイから荷物を奪い言った。 「そうですか。それは立派な心掛けですね。しかし、今のあなたはお客様の身。我がラハルト家メイド隊に恥をかかせてはいけませんよ?」 「いえ。お言葉ですが、わたしはマリア様の専属メイドです。今回のお出掛けの時に、わたしはマリア様から世話を直々に仰せつかりました。わたしの仕事を奪われては困ります!」 二人の間で、バチバチと目で火花を散らすのが目に見える。 結局テンクイが引き、マルは小さな体でわたしの大荷物を一生懸命持ちながら、後ろを着いて歩く事になった。 「テンクイ、あなたマルを試しましたわね?」 隣を歩くテンクイに耳打ちをすると 「はい。さすがお嬢様です。失礼ながら試させて頂きました」 「それで、感想はどうですか?」 「なかなか見所がありますね」 「わたくしがラスベイガンスへ行く暫くの間、あなたの元で短期間ですが修行を頼めないかしら?」 「本人が納得して頂けるなら構いません」 「わかりました。では後程、本人にはお話をしておきます」
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