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「では馬車を出発させます。ここからアクアリウスまでは止まらずに馬車は進みます」
休憩から戻りアナウンスする馬車操者の声で、マルがようやく目が覚めて起きた。
「あ…マリア…様…」
「良く休んでたので、起こしませんでした」
膝枕の上から、わたくしを寝ぼけ眼で見つめるマルに微笑みかけた。
「ふぇ…?ふあぁぁぁぁっ!申し訳ありません!申し訳ありません!」
膝枕されている状況に気がつき、飛び起きるマル。
そんなマルに薬を手渡す。
「マル、これをお飲みなさい。あと落ち着きなさいね?」
「はいぃ!あの、こ、これは?」
「酔い止めの薬です」
小瓶をマジマジと見つめ、マルは手に取った。
「これは…マリア様が…?」
「はい、あなたが寝てる間に買ってきました。効けば良いのですが…」
マルは手に小瓶を持ちプルプルと震えたかと思えば、小瓶の蓋を開けて一気に飲み干した。
「ぶはーっ!効きました!もう大丈夫です!」
んなアホな…
「そんな早く効く訳が…」
「いえ!マリア様が、わたしみたいな者の為に、わざわざ買ってきたくれた薬です!効かない訳がありません!」
その様子をクスクスと笑いながら、馬車護衛の冒険者が見ていた。
マルは薬を飲んだあとは、全く酔う事もなく、それどころか"ぐぎゅぅぅぅ"と、お腹の音を馬車内に響かせる程に元気になった。
「マル、お腹が空きましたか?」
恥ずかしいのか、顔を真っ赤にさせてうつむきながら、小さく頷くマルに準備したお弁当を手渡した。
「マリア様、これは?」
「お弁当ですわよ?」
「それはわかります…。でも、主の前でわたしだけが…」
「わたくしの分もございますから、一緒に食べましょう」
「あの、マリア様はお昼は召し上がったのでは…?」
「いえ、食べてないですわよ?あなたが食べられないのに、わたくしだけって訳にもいかないですもの」
「マ、マリアさまぁ…」
「なっ!なぜ泣くのですっ!!!」
一緒に乗ってる冒険者が、また私達を見てクスクスと笑っていた。
そして、日も落ちて薄暗くなった夕方。
アクアリウスへと馬車が到着した。
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