マリアさん大激怒の巻き

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「す、凄いですね…」 水の都アクアリウス。 街は水路が縦横無尽に走り、街中の移動は水路を利用して小舟を使う。 至るところに水の精霊ウンディーネの姿を模した芸術的な彫刻を施した光景は、まさに水の都と言う冠に恥じない街だ。 「では今晩の宿を探しましょう。マル、まずはあの小舟に乗りますよ」 「はい!」 小舟の船頭に料金を払い、街の真ん中の繁華街まで移動をする。 小舟から見る夜のアクアリウスの街は、街の光と水面に反射する街の灯りで、非常に幻想的な光景だ。 「どうですか?マル。綺麗でしょ」 「はい…。感動でなんだか涙がでちゃいます…」 ゆらゆらと水面に映る街の灯りを堪能したあと、小舟は目的地へと到着した。 名残惜しそうに小舟を降りるマルを従い、わたしは今晩の宿を探す為、街中を歩いていると 「あっ!マリアさん?マリアさんですよねっ?」 と、声が聞こえてきた。 その方向に振り返ると、メイド服に身を包む1人の女性が手を振りながら近寄ってきた。 「お久しぶりです!マリアさん!」 その懐かしい姿… 「リオさん!リオさんじゃありませんか!」 「はい!その節は大変お世話になりました」 魔族に呪いをかけられ、サハギンクイーンの姿で壺に封印され、めぴこちゃんの魔法で人間に戻れたリオさんの姿だった。 「お久しぶりです!マリアさん」 「ええ!お元気そうで何よりですわ」 ラーグ領主就任の挨拶の時に、このアクアリウス領の領主タムン様への挨拶に伺ったのだが、生憎リオさんは歌の仕事で屋敷に不在だった。 「皆さんもお元気ですか?」 「まるひよこや、めぴこちゃん達ですか?元気でやってると…思うのですが、実はここ2ヶ月程会っておりません」 「そうなんですか。そう言えば今日はご一緒ではないですもんね」 「ええ。あれから皆も色々と忙しい身になりまして…前の頃の様になかなか自由には…」 「そうですか。マリアさんも、いまや領主ですものね…。出世は喜ばしい事なんでしょうが…」 「ええ…。幾分か寂しさを感じるのも事実です…」 「そうでしょうね…」 リオさん独特な包み込む様な雰囲気に、わたしは珍しく愚痴を言ってしまった。
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