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「めぴこ!終わりだ!ヒールを!」
「は、はいっ!アークヒール!」
ジャギコの右腕が炎に包まれ焼かれた時間は約30秒ほどだろう。
苦痛な叫び声を聞いて、焼けた匂いを嗅いだ時間はたった30秒なのだけど、とてつもなく長い時間に感じた。
腕はまるで線引きでもしたかの様に綺麗に肩から焼かれ、指先まで真紅の肉を露にしていた。
痛みと叫び疲れでぐったりとしたジャギコから、少しでも早く苦痛を取り除きたい一心で魔力を全開にして、わたしはヒールを送り続ける。
ミーシャから貰った杖のおかけで、魔力の効率はとてもいい。
そして毎日かかさずにやった、まるひよこさん直伝の魔力運用も生きている。
無駄な魔力は一切使わず、ただ一点。
ジャギコの焼けた腕だけに集中して送る魔法。
「めぴこ、いい感じかもしれん!」
苦痛で呻くジャギコの声も、少しずつ小さくなっていく。
それと比例して、腕は本来の皮膚が徐々に再生されている。
「あと少しですね…気張ります!」
アークヒールを始めてから5分。
ジャギコは痛みから解放された為か、息遣いも穏やかなものになってきた。
そして焼けただれ、真紅の肉を露にしていた腕には元々の肌だったであろう、きめ細かい純白の肌が出来上がっていた。
「もういいんじゃないか?」
まるひよこさんの声に、わたしは魔法を止めた。
ここまでで、わたしの魔力はさほど減った気はしなかった。
これなら魔力補充をしなくても、全身いけると思う。
「ジャギコさん、右腕は見えますか?」
変わりゆく自分の右腕を、まじまじと見つめるジャギコ。
さっきの苦痛の涙ではない、感涙の涙が頬を伝う。
「はい…。はい…はいっ!見えます!ああ…わたしは…この嬉しい気持ちを、どう言葉にしたらよいのか…」
まるひよこさんとハイタッチをして、この作戦に効果がある事を喜んだ。
しかしまだ右腕だけだ。
まだこれから左腕、両足、背中に腹部、そして顔を含む頭部で同じ苦痛を味わい続けなければならない。
「ジャギコさん、まだ始めたばかりです。これからも耐えられそうですか…?」
しかしこんな質問は愚問だったようだ。
グラスの水を一杯飲み干して、自由な効かない顔で、精一杯の笑顔を作り…
「もちろんです…!だから宜しくお願いします」
そう答えた。
そしてまた、ジャギコの…ラフェイリの苦痛に満ちた絶叫と泣き叫ぶ声が始まる。
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