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「わたしが魔王でも気にしないで側に来てちょうだい。ケルンから離れてしまうとこの子がまたあなた達にじゃれついちゃうかもしれないから離れて動けないのよ」
そう言われても普通は人間がそんなフランクに魔王に近づきません。それにオーエルンが微動だにしない。だって本当に魔王なら知り合いだし何かしらの挨拶くらいはするはずだ。さらに言えば魔王って確か名前はルリじゃなかったかな。
「来いと言われてもなぁ…」
「まるひよこどうしますの?」
「そうだなぁ…どうしような」
そりゃみんな悩むよね。当たりまえだ。だからわたしは自分の考えを話してみた。
「あの子は強いけど本当は自称魔王なんじゃないですかね?」
「どうしてそう思いますの?」
自分の考えをみんなに話をしてみると、ただ1人を除いて納得した。
その納得してないのがオーエルンだった。
「オーエルンは納得してないみたいだな。残念だが俺達、人間は魔王の顔は知らない。いまの時代の人間側は未だ魔王まで辿り着けたことはないからな。でもお前は知っているだろ?アレはルリなのか?」
フォンティナさんの質問にオーエルンは腕を組み考え事をする様な仕草を見せた。どうやら答えに困っている様子だった。
「おーい!そこの人間達と、そこの高位魔族よ。約束する。妾もケルンもなにもせんからとりあえず近くにこんか〜?」
でかいケルベロスはおとなしくお座りして自称魔王の言いつけを守っている。
「まず、あのお方はにっくきルリではありませんね。顔が違います」
てことは魔王ではないのか。やっぱり自称魔王なのね。
「そしておねえさま、気が付きましたか?あの自称魔王様はわたたしが魔族だと気がついてましたね」
だからなんだと思ったが、良く考えたら確か高位の魔族ってのは、相手が人間の形態をとっていても魔族だと気がつくんだった。てことは、間違いなくあの子は魔族側って事だ。そして続けてオーエルンは言った。
「更にですね、あのお方とは魔界でも今まで1度もお会いしたことはありません。でもわかります。間違いなくわたしより上位の高貴な身分でかつて四天王と呼ばれたわたしより高位です。わかるんですよ、同じ魔族同士だと相手の魔族としての身分や力量が。」
「それはどういう意味なんだ?」
まるひよこさんの問に、オーエルンはため息をひとつついて答えた。
「わたし達四天王よりも上位、それは…魔王様クラス以外にはあり得ないはずなのですよ。なんならルリ以上かもしれませんね」
あの子は魔王ルリではない。でも魔王クラスの力量を持つ魔族。
一体どういうことなのだろう。
「おねえさま?とりあえずあのお方に戦う意志がないのはわたしでもわかりますので信用して良いと思いますよ」
するとまるひよこさんが言った。
「オーエルンよ、どのみち今のままだとあいつがその気になれば、わたしら全員纏めて殺ることが出来るってことだな?」
オーエルンは静かに頷いた。
「そうなるともう従うしかないな。行くしかないな。みんなそれでいいか?」
ジョーさんの問に、全員が頷いた。
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