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意を決してジョーさんを先頭に自称魔王のミスティアへと近寄っていった。
私達のピリピリとした空気とは反面、ミスティアはリラックスした表情で伏せをしたケルベロスの顔を撫でている。
そして彼女の目の前まで歩を進めた。
「まずは妾のペットが失礼をした。人間たちよ怪我などないか?」
そう言って私達を気遣ってくれた。人間と契約しているオーエルンならまだしも、魔族なのに人間を気遣ってくれるなんてやっぱりなんか変だ。そしてジョーさんはそれをきっかけに会話を始めた。
「お気遣い感謝する。ですが心配は御無用、我々はこう見えてもそこそこ力には自信があります。そんな事よりも大変失礼な質問をしますが宜しいか?」
「なんじゃ?構わないぞ。申せ」
「では、失礼を承知で伺います。本当にあなたは魔王なのですか?」
「そうじゃな。とは言っても勝手に名乗っているだけだがな」
やはり自称だったみたいだ。しかし隣のオーエルンは片膝をつき頭を下げていたまま微動だにしない。
「では本当の魔王は、魔王ルリは魔界にいると言う事で宜しいか?」
「いや、おらんな」
「それは何故ですか?」
「簡単じゃよ、それは妾がルリを葬ったからじゃ。楽なもんじゃったよ」
ちょっと待ってくださいよ!魔王を滅ぼした!?長年、人間の天敵だった魔王を!?
「そ、それは、どう言うことですか!」
あくまでも冷静に対応していたジョーさんだった、さすがに戸惑いっている様子だ。そして同時に隣にいたオーエルンが膝まづいたままで口を開いた。
「まずはルリを滅ぼして頂き、真感謝の極み。アレはわたくしの仇でございました。本当にありがとうございます」
「そうじゃったか。別に感謝などいらんぞ。アレは生意気にも妾に喧嘩を売ってきたのじゃ。だから買ってやったのじゃ。気にするな」
「なるほど。ではあとでそのお話は伺うと致しまして…ところで貴女様はこの世界の魔王様では御座いませんね?どういった理由でこちらに?」
「そうじゃよ!妾は別な世界から転移をしてここに来た!良くわかったのお主。さすが高位の魔族じゃな。偉いぞ!」
ちょっと待って!!!
なに、この自称魔王も違う世界からの異世界転移者なの!?
マジかぁ…
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