あふたー 1

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「続けていいのか?」 「うん」 ちょろい。 「キスもして。そしたら痛くても我慢する」 「…………」 そうでもなかった。 「終ったらな」 熱すぎるくらいの期待の眼差しを無視しながら俺流の手当を済ませる。 「で、おじさん達は?」 「今日は帰ってこないと思うよ」 「ふーん。相変わらず忙しそうだな」 救急箱を片付けて脇に押しやり、一息つく。 風呂を借りて体も綺麗になったし、手当も終わった。 ようやく落ち着ける。 「ねえ、キスは?」 「…………」 そうでもなかった。 クイクイとしつこく袖を引っ張られるので、無傷の左側の頬に軽くキスした。 なのに、小太郎は不満そうな顔だ。 「口じゃないの?」 「お前、怪我してるだろ」 「平気だから、してよ」 いつもだったら問答無用で仕掛けてくるくせに、今回はやけに強請ってくる。 なるべく傷に触れないように唇の表面を合わせて、すぐに離れた。 それだけなのに、小太郎は満面の笑顔を浮かべている。 尻尾を振って喜んでいるワンコの姿が見えたような気がして、思わず頭を撫でてしまった。 「抱っこもして」 「………」 恋人というより、ペットか子供を持ったような気分だ。 それを可愛いとか思うような腐った頭になった俺は、小太郎を抱こうと膝立ちになった。 距離を詰め、床に座ったままの小太郎を抱こうとした瞬間、腰に腕が巻きついて逆に抱き寄せられた。
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