力士追いかけて

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私は夫に先立たれ、娘も大学生になって一人暮らしを始め、 気楽な、でも何もない、空虚な独身生活を過ごしていた。 いつもなら夕方は民放のニュースを見るのに、手が滑って なにげなくつけたNHK。 そこには裸と裸の戦いをする相撲が映ってた。 日本人の中にある一人の筋肉隆々でハンサムな関取になって 間もないある外国人力士がいて、アナウンサーが 「遠い祖国から横綱になりたいとやってきたのですが ホームシックによくなって、でも頑張ってるんですよ」と言っていた。 私の夫は醤油顔だったけど、彼はこてこてのソース顔。 その風貌と素敵な笑顔のとりこになって、そして彼の真面目な姿に 絶対に横綱になってくれるという確信があって、いつしか 彼目当てに夕方を過ごすようになった。 偶然、彼の母親は私と同じ年で、生まれた月も同じ月と知り、 ますます親近感を持ち、今までの空虚な生活がうそのようで 急にきらきらと青春時代のように輝いた日々となった。 娘にも「ママ、変わった。いきいきしている。」と褒められた。 その応援はエスカレートし、彼がツイッターをしていると知り、 本場所中には朝に、そして取組後に必ず応援のリプをした。 もちろん、ツイッターにコメントが上がれば必ず応援リプ。 たまにいいねをもらうと天にも昇るうれしさとなって ますます応援し続けた。
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