0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
私は夫に先立たれ、娘も大学生になって一人暮らしを始め、
気楽な、でも何もない、空虚な独身生活を過ごしていた。
いつもなら夕方は民放のニュースを見るのに、手が滑って
なにげなくつけたNHK。
そこには裸と裸の戦いをする相撲が映ってた。
日本人の中にある一人の筋肉隆々でハンサムな関取になって
間もないある外国人力士がいて、アナウンサーが
「遠い祖国から横綱になりたいとやってきたのですが
ホームシックによくなって、でも頑張ってるんですよ」と言っていた。
私の夫は醤油顔だったけど、彼はこてこてのソース顔。
その風貌と素敵な笑顔のとりこになって、そして彼の真面目な姿に
絶対に横綱になってくれるという確信があって、いつしか
彼目当てに夕方を過ごすようになった。
偶然、彼の母親は私と同じ年で、生まれた月も同じ月と知り、
ますます親近感を持ち、今までの空虚な生活がうそのようで
急にきらきらと青春時代のように輝いた日々となった。
娘にも「ママ、変わった。いきいきしている。」と褒められた。
その応援はエスカレートし、彼がツイッターをしていると知り、
本場所中には朝に、そして取組後に必ず応援のリプをした。
もちろん、ツイッターにコメントが上がれば必ず応援リプ。
たまにいいねをもらうと天にも昇るうれしさとなって
ますます応援し続けた。
最初のコメントを投稿しよう!