力士追いかけて

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その応援が役に立ったのかは分からないが、 途中けがして休場するも、その後三役、大関と昇進。 人気もどんどんうなぎ登りで、フォロワー数も10万を超え、 もはやリプにいいねが付くことはなくなった。 でも、応援リプを送ることは生活のルーティーンとなっていたので 細々ながらしていた。 そしてついに来場所は綱取りの場所になった。 その頃、私の体調があまりよくなく、 何気なく病院へ行ったらなんとがんが見つかった。 それも既に末期で手遅れだとの判断。 場所が始まったものの、急に体力がなくなり、 ルーティーンの応援リプもついに出来る力がなくなった。 ただ、夕方の彼の取組を入院したベッドの上で眺めるだけ。 彼は順調に勝ち星を重ね、ついに明日の横綱戦に勝てば横綱昇進になる。 その晴れ姿が見られると言うのに私には天に召される時が来て 意識がもうろうとしていた。 すると、病室のドアから誰か大きな人がびんつけ油の香りを漂わせ。浴衣姿で入ってきた。 ああ、なんと彼ではないか。 「ダイジョウブデスカ。」 大丈夫じゃないよ・・・どうしたの?どうしてわかったの? 彼の後ろには付け人と娘がいた。娘が力士に頼んで来てくれたのだ。 骨と皮になったみすぼらしい体を抱き上げ、 目に涙を浮かべ、ほおにそっと優しいキスをしてくれた。 「イツモリプアリガトウゴザイマシタ。チカラニナリマシタ。 アシタゼッタイヨコヅナニナリマスカラゼッタイミテクダサイ。」 「ありがとう。横綱になるのを楽しみにしているよ。」 私もうれし涙を浮かべ、彼の横綱昇進を信じて、腕の中で天国へと旅立った。 次の日、残念ながら彼は最強の横綱に負けていまい、初めての挑戦で綱取りならず、 また厳しい稽古に日々取り組んだ。 あれから1年後、彼は見事に横綱に昇進した。 やっぱり私の目に間違いはなかった。 ツイッターには娘が私の代わりに今も応援リプをしてくれている。
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