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北野天満宮は内裏から半里余り西にある。昔には及ばないのかもしれないが、それでもなかなかのにぎわいぶりで、氏真も満足したようだった。しかし、氏真が末社を一つ一つ見て回ろうとするので弥三郎は閉口した。
「弥太郎知っておるか、『東風吹かばにおいおこせよ梅の花、主なしとて春を忘るな』という歌を。菅原道真公が太宰府におわした時京の屋敷にある梅の木を偲んで詠まれた歌というぞ。しかしここの梅も松も道真公の昔と変わりないようでよいのう……うむっ!」
「道真公は『ふる雪に色まどわせる梅の花鶯のみやわきてしのばん』と詠まれたが花を愛でるウグイスがおらぬのう……。ウグイスの心も空に飛んで行ってしまったか……うむっ!」
北野参詣宮中末社あまた有
梅かかも松もかはらぬ神垣の隔てはあらし今も昔に(1‐49)
鶯も空に心や散花の枝つたひなく梅の下かせ(1‐50)
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