2人が本棚に入れています
本棚に追加
北山石不動霊作と云々
うこきなき名を顕せる巌こそ真も世々に替らさらまし(1‐52)
それから金閣に近寄って見物したが、氏真は何をひねくれたのか、金閣を見ずにあらぬ方を眺めている。
「御屋形様、金閣をご覧にならぬのでござりまするか?」
弥三郎が聞くと、氏真は得意そうに口を開いた。
「見ておる。池に映った金閣の姿を見ておるのだ」
氏真のいる場所に寄って見ると、確かに池の面に金閣が移っている。
「ゆく川の水は絶えずして、しかも元の水にあらず、か。形ある金閣はいずれ朽ちるやも知れぬが、水は朽ちぬ。水面(みなも)に金閣の影を移すこの水は流れて行くが、その面影を流れに乗せて後世に伝えると思いたいのう……うむーっ! 一首浮かんだ」
最初のコメントを投稿しよう!