2人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
とうとう二月になった。しかし未だ信長上洛の知らせはない。
「我らはいつまで御屋形様の物見遊山に付き合わされるのかのう」
「さあ、見当もつきませぬ……」
氏真に早朝に叩き起こされた弥三郎と弥太郎はそんな事をこそこそと話し合ったが、氏真は信長の上洛など気にせぬといった様子で、
「さあ、これから愛宕に参詣するぞ」
と言い出した。
「愛宕でござりまするか……」
弥三郎は宿から愛宕山まで四里ほどだと知っていたので、今日は難儀な事になるな、と心中嘆息した。
最初のコメントを投稿しよう!