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翌日二月十二日は氏真も昨日までの嵯峨野巡りで疲れたらしく珍しく昼まで何も言わず自室で過ごし、いくつか手紙を書いて使いの者に持たせただけだった。
しかし昼を過ぎると突然、
「よし、今日は鞍馬へ参るぞ」
と言い出した。
「鞍馬山でござりまするか!?」
弥三郎は思わず声を上げた。ここから鞍馬山までの距離は二里ほどだが、山道を行かねばならない事を考えるとこれから出掛けるのであれば日帰りは無理だ。
「そうじゃ。鞍馬山じゃ」
「御意」
弥三郎より先に弥太郎が答え、弥三郎を咎めるような目つきで見てから供の者たちに声をかけた。弥三郎もしぶしぶ腰を上げた。
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