2人が本棚に入れています
本棚に追加
青い顔をしていた弥三郎だが弥太郎の今の言葉にはついぷっと吹き出した。氏真は京に着いてからこの調子でもう百首以上歌を詠んでいるはずだから、確かに奇首百出だ。
弥三郎はうなぎの蒲焼きのにおいを嗅いで飯を食うケチの話を思い出して腹の痛みを忘れてしばらくニヤついていた。
もうしばらく川沿いの道を歩いたが、いよいよ夜の闇が濃くなった。鞍馬山を照らす月が道を照らしてくれるかと期待したが、霞んでぼんやりしている。
鞍馬参詣路次遅らする事有て市原の辺
日入ぬ梅幽にみえて里遠し
名のみして市原のへは人もなし里のしるへに匂う梅かゝ(1‐106)
河そひの道はくらまの山端にしるへかほなる月も霞める(1‐107)
最初のコメントを投稿しよう!