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時は移ろう。
恋人たちが願う早さかどうかはともかくとして、世間一般が考えるよりうんと早く、慎一郎と秋良は佳き日を迎えることになった。
仲人は、直属の上司ではなく、恩師で父の友人でもあった武がつとめることになった。
「懸命な人選だね」と上司の横山は頷く。
「武先生以上の適任者を自分は知らない。長年の恩返しにもなるだろう」
内心で冷や汗が流れた。
武が父親の旧友、かつ昔からの知人でなければ、今後、ここでの仕事はやりにくくなったことだろう。
「僕はいいんだけどさ」
改めて挨拶をしに訪問した学長室で武は言った。
「君のお父さんとは因縁のある付き合いだったし、うちの奥さんとも同級生だったしね」そう言いつつ、面白そうであった。
「支障ありそうだったら、横山君に振りなさいよ、今からでも遅くない」
武は、間もなくこの場を後任の横山に明け渡す。
「お気遣い、感謝します」慎一郎と一緒についてきた秋良もならう。
「挙式まで日もありませんので……」
「そっか」武はカラカラと笑う。
「あと数日だもんねー、いきなり振られても、横山君怒るか」
いや、自分は構わないのだよ、他ならぬ君の頼みなのだから。君の父上には大層世話になったし。しかし、今頃? 何故もっと早く、計画的に動けないのだね。だいたい君は――
くどくどと言う姿を想像する度に気が滅入った。
秋良は武と談笑し、笑いさざめいている。
まあ、いいか。
彼は気を取り直す。
彼女が笑顔でいられるのなら、それでいい。
どれほどの時間、武と話していたことだろう。
コンコンとノックする音がした。
この叩き方は。
慎一郎は振り返る。
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