第1章 傍ら

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 年越しそばを食べている途中、美咲は時計を確認して立ち上がった。 「私、出掛けてくるね」 「えっ?どこへ」 「友達と初詣」と、美咲は携帯をパンツのポケットに入れ、弟の稔の頭を軽くペシッと叩きながら、自分の部屋へ戻った。  自分の部屋でコートを羽織ると、そのまま階下に降りてきて、「行ってきます」と声を掛けてから玄関を出た。  コートを着ているとはいえ、真冬の空の下はとても寒い。ここ数日、ずっと晴れているから尚の事寒い。  美咲はSNSで連絡を入れ、今から駅に向かうと伝えた。  返事はすぐに返ってきた。それを見た美咲は思わず、クスッと笑ってから相手に電話を掛ける。  数回のコールの後、相手が出た。 「待ち合わせ時間より早いよ」と言うと、相手は「だって、ここまでどのくらい時間が掛かるか分からなかったし、臨時バスと電車の時刻表も見ていないから・・・」 「調べて無いの?」 「調べられなかった」 「なぁに・・・。そんなに美咲とのデートに浮かれていたの?」と美咲は微笑みながら尋ねた。 「違うよ。今日は練習が無いから、友達と個人フットサルへ行って、身体を動かしていたら、疲れて帰って昼寝して・・・。起きたのが9時だったから急いで来た」 「9時に起きたの?夕飯は?年越しそばは?」 「年越しそば?一応、食べてきたけど・・・」  電話の相手は、少し気まずそうに声のトーンを落として話す。  美咲はそんな相手を想像すると、また、微笑んでしまう。 「あっ、今から電車に乗るから、待っていてね」と伝えて、美咲は電話を切った。  電車に揺られる数分の時間がとても長く感じる。  駅で待っている彼も、同じ気持ちだろうかと美咲は考えた。  これから二人で鎌倉へ初詣に行く。その足で、鎌倉の海沿いを歩いて、江の島の辺りで初日の出を眺められたら幸せだと話をしたら、即座に彼はOKを出した。  彼と過ごせる時間は1月1日だけだ。  翌日から彼は合宿に入る。 『その前に・・・』
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