12 クリスマス

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だって清凛さんは、 「落ち着いて。慌てないから」 優しい。 「ゆっくり、ボクに気を許してくれればいい」 とても優しい。 あたしが、心の中で何を考えているか、知りもしないで――。 「澪ちゃん?」 あたしの頬を右手の親指でそっと拭った。 「なんで泣いてるの?」 あたしは、なんで泣くのだろう。 「誰を思って泣いてるの?」 清凛さんが意地悪く頬を歪めて聞いた問いに、あたしは顔がくしゃくしゃになるのを感じた。 清凛さんは気づいている。 あたしが見ないふりをしていたことに、きっと気づいている。 あたしはただ、頬を拭う清凛さんの指が、 『これは違う』 と感じているだけ。
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