始まりの朝

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窓辺を離れ、ベッドと反対方向にある作り付けの収納箱へと向かいながら服装をどうするかを頭の中で考える。 長いこと旅を続けていたせいか、服を選ぶなんて作業を忘れかけている自分が残念な気がしてならない。まだお年頃と呼ばれる年齢なのに、お洒落とは程遠い生活をおくっていたのだから仕方がないと諦めた。 扉を開いても、入っているのは地味な服ばかり。片隅に華やかな色合いの物もあるけれど、流石に子供服は着られない。大して成長してはいないんだけど、抵抗あるよね。 出掛けた序でに幾つか買おうと決めて、無難な動きやすい服を手に取った。 今日は久しぶりに大掃除をする予定だし、誰かに見られる訳じゃない。そう言い聞かせて着替え、薄手の上着を羽織る。 収納箱の横にある姿見に写る自分は、体型や顔つきも殆ど変化はない。唯一変わったのは、肩につかない長さで切り揃えていた髪が、背中の真ん中まで伸びただけ。 鏡台の小さな引き出しから赤い髪紐を取り出して一纏めにすると、着替えた寝間着と寝具を持って寝室を出た。
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