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洗濯物が入った籠を持ってバルコニーへ出ると、冷たい風が頬を撫でる。
季節はもう花も綻ぶ春だけど、早朝の森の中はまだまだ寒い。まして、私の家があるのはこの森で一番の大樹。地上よりも温度は低い。
「さて、洗濯しなきゃね」
脇に置いてある大きめの箱に洗濯物をドサッと入れ、そばにある棚から洗剤瓶を取り出し蓋一杯を計り入れてから閉めた。
この箱は私が幼い頃、魔方陣開発の研究をしていた父が開発に関わった発明品で《洗濯機》という物。
蓋に描かれた複雑な魔方陣に触れて魔力を流すと内部に水が溜まり、底に渦が発生して洗濯物をくるくると回して汚れを落とす。
一定時間回り続けると渦が消滅して流れが止まり、外へ排水される。
水がなくなれば連動している別の魔方陣が起動して小さな竜巻が起きて洗濯物の余分な水分を飛ばしてくれる。
一連の動作が終わると鈴がなって教えてくれちゃうスグレモノだ。
製品化して大量に世に出回り、主婦達に大当りしたのは言うまでもない。
ちょっと頑張れば買えちゃう良心的な価格に設定されたのも背景にあるだろう。
そこに便乗したのが母。
植物に関する知識が豊富で薬学にも精通していたハンターで、殺菌・消臭効果のある植物を元に仕上がりの香りにまでこだわった洗剤を作り上げたのだ。
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