プロローグ

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プロローグ

大地を巡り、滔々(とうとう)と無限に湧き出る泉を生命の象徴とするならば、あるべき(しん)は冷たく澄んでいなければならない。 もしもそれが()色に染まるものならば。 暖かな温もりを持って例えられたなら、身体中から(こぼ)れ落ちる命の量は(いく)ばくのものになるものか。 鬱蒼(うっそう)とした木々が昼間でも日光を遮り、(わず)かな斜光でなんとか太陽の位置が分かるような、深い深い森の中でのことだった。 二人の少女がいた。 一人は全身に深く傷を負い、息も絶え絶えに力なく横たわる。もう一人の少女に手を握られ、今まさに命の灯が消えようとしていた。 「ソリティア……あぁ、ごめんなさい……私のせいだ」 「そんなことはないよ。ユノーは悪くない。悪いはずがないじゃない……」 「お願いだから……いかないで。私を一人にしないで」 「……大丈夫だよ。私はいつでもユノーの側にいるから。離れないから」 苦しそうに咳き込み血を吐きだす。伝えたいことは山程あるのに、そのどれもが今となっては時間が足りない。 「ソリティア。ねえソリティア。しっかりして……私が見えてる? ねえっ」 「…………ユノー」 やがてソリティアの瞳から光沢が失われていく。だから最後に言葉はいらない。記憶の終わりは笑顔で閉じたい。 ──その日、ソリティアは死んだ。
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