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逃げるように木窓を開けて外の空気を顔にあてると、ソヨリと風が吹き髪を撫でる。
向こうからは井戸へ水を汲みに行っていたトマスが戻ってくるのが見えた。
頃合いだった。
森へ入る前に、護衛としての精霊術を使う条件が整ったのだ。
一口に護衛といっても、これから行うのは剣や武力を用いたものではない。精霊への語りかけによる超常の力、精霊術の行使によるものだ。
ソリティアは物理的にも決して弱いという訳ではないのだが、英雄譚に出てくる騎士のごとくに超人じみている訳でもない。
盗賊や狼が相手でも単体ならナイフがあれば倒せるかもしれないが、熊には勝てないし、数人がかりで襲われればトマスのような普通の大人でも怪しいものだ。
そこで、精霊の出番となる訳だ。
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