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どんなに相手が気に入らなくても、事実を突き付けられれば口をつむぐしかない。
確かに、彼女が言っていることも一理ある。しかし、一度芽生えた不信感というものはそう簡単に拭えるものでもない。
何よりも、ユノが手遅れだという彼女の言をソリティア自身が信じたくはなかった。
「ああ、認めよう。確かに今の私は客観性に欠けている。感情が先行して正しい判断が出来ないかもしれない。だからそこを退け。今の私は簡単に間違うぞ」
「退くもなにも、最初から止める気なんてないわよ。ただ事実を言っているだけで」
「あいにくと、自分の目で見るまでは信じない」
「だから……見せてあげると言っているの。聞く耳はなくとも見る目くらいはあるでしょう」
そう言うと、ユノーの体から光が滲み出した。紡ぎだすのは古き日の幻影。ユノが隠し、ソリティアが目を背け続けた、終わってしまった遥かの記憶だ。
「明るく夜空に太陽の影、暗く光に溶ける月、残響、追憶の栞──今宵いつか」
ロザリオを強く握りしめ彼女をじっと見据える。刻み込まれた決意を胸に。黄昏る混迷の中、景色が白く塗り変わっていくのだった。
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