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霧の立ち込める森の中を、幼き日のソリティアが歩いていた。背中にユノーを背負い、疲れたという感覚もとうに忘れてしまった足を引きずりながら進んでいく。 疫病によって衰弱したユノーの体は驚く程に軽かったが、子供のソリティアにとっては充分な負担であった。 それが諦める理由にはなり得ないが。 「待ってて……ね。ユノー……きっと助かるから。頑張って」 「……うん」 弱々しくも返事を返すユノーに少しだけ安堵する。まだ意識がある。生きている。 それなのに、どうして自分が弱音を吐くことが出来るだろう。鉛のように重くなった足をまた一歩と踏み出した。 村を襲ったのは精霊の病であった。肉体の不調であれば、精霊術で如何様にも手の施しようがある。しかし、精霊術は精霊の力を借りて発動する術だ。精霊そのものに問題がある場合は術を使ってもその効果を上手く発揮することが出来ない。 全ての根元である精霊が弱り続ければ、当然その器も影響を受ける。 ユノーの体は、至るところが朽ちかけ、痛み、終焉に向けて弱っていた。
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