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4-3
暗転する景色の中で意識は現実へと戻っていく。傍らには自分と同じ名を持ち、かつて全てをユノーに与え、今はその名を自称する幻影の少女と、何も言えずに沈黙を続けるマフィンがいた。
この感情をなんと呼べば良いのだろう。
怒りとも悲しみとも、喜びとも楽しみとも違う。しかし、その全てを孕んでもいるような。言葉に詰まるというよりは、思いに詰まるといった感じか。
ユノはずっとこんな気持ちだったのだろうか。
打ち明けられない秘密を一人で抱え込み、言葉を飲み込み。思い詰め。
「そんな術が存在するのかは知らないけれど、あなたが記憶を消す術を話さなくて本当に良かった」
静かに語りだすユノーはマフィンに向けて、どこか哀しそうに視線を向ける。ユノに残された傷は彼女にとっては望まない痛みであると同時に慰めでもある。
マフィンは何か思い当たる節でもあるのか僅かに顔を上げて吐息を漏らした。
「あぁ、あの時の……そういうことか」
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