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「どういうことだよ」 形だけ訪ねてみたが、おおよその察しは付いている。 ()()の記憶を消して出来ること。()()()が精霊術を使える領域にまで顕現していること。先に見せられた記憶にこの二つを組み合わせれば自ずと答えは見えてくる。 今宵いつかで集めた彼女の記憶と、ユノの肉体に在るユノーの残滓(ざんし)を融合し集約する。次いで、ユノ自身の記憶を消しさってしまえば、残されるのはユノー本人という理屈になる。 ユノは水精の媚薬を媒体に、かつてユノーから譲り受けた肉体を彼女に返したのだ。 記憶を消す術をユノもマフィンも知らなかった。もしも時間的な猶予があったのならば、地道にその方法を探すつもりだったのかもしれない。 しかし、そんな余裕はなかった。 マフィンに追い込まれ、ソリティアに問い詰められた土壇場で、ユノはもう一つの方法を選択したのだ。 即ち、自らが意識の底へと沈むのではなく、魂の根元からユノーを表層まで引き上げる道だ。 だから「手遅れ」なのだ。 ユノーがここに存在することが、それが既に成されたという何よりの証なのだから。
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