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ソリティアもあまり神には頼らない(たち)なので、気の知れたトマスとの会話は自然と愚痴っぽくなってしまうことが多い。 教会のシスターである彼女の立場からすれば、本来ならばそれをたしなめ導いていくのが正しい姿なのだろうが、実際には一緒になって悪のりをした挙げ句に矯正される。というのがある種の日課のようになっていた。 「祈りに来たってことはまた仕入れに行くんでしょ? 今度こそ布地を頼むからね」 「それなんだがね」 「行かないからね」 先行して釘を打っておく。 商人である彼は定期的に山を(いく)つか隔てた南の街まで遠出をするのだが、その途中には狼や盗賊のうろつく森があるのだ。
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