4-3

5/21
前へ
/322ページ
次へ
「ユノ……」 そっと呼び掛けてみたが彼女からの返事はなく、しかし胸が上下しているので息はある。 ユノーが前に歩み出てユノの(かたわ)らに膝まづく。 「あとは、任せたからね」 その身体が光の粒子となり、ユノの中に吸い込まれていった。 ユノは目覚めない。 ユノの魂とユノーの魂。その二つが一つの肉体に宿り共存している。ユノを目覚めさせる為には、同等の存在として顕現している彼女等の意識から、ユノだけを引き上げて安定させなければならない。 どちらが肉体の主導権を握るのかという話だ。 普通ならば誰にとっても譲りがたい物の筈が、今回に限ってはお互いにその椅子を譲り合っている。 自身の価値をないがしろにして、魂の座は空席のまま肉体だけが放置されているのだ。
/322ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加