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マフィンと初めて対峙した時がそうだった。信じられないということは、言い換えれば不可能だと信じているということだ。 「ユノは自分に自信がないって言うけれど、じゃあノークの占いの前はあったの? ていう話だよ。 繰り返すけど、ノークの占いは『変える』為にあるんだよ。変わってないんじゃないの?」 「それは……」 否定の言葉は反ってこない。 ノークの占いの前と後、ユノの中で思いが変わらないというのはノークの占いを信じないということだ。信じないのならば、不吉の暗示を気にする道理もまたない。 では、占いを信じるならば、今ユノが持つ後ろ向きな思いは変わった結果でなければならない。占う前は全てが上手くいっていて、ノークの言葉で不安が芽吹いたという形でなければ現状が成立しない。 「無いものをいくら信じても()は永遠に、それこそ地平線の彼方まで行っても()だよ。 それでも、優しい思い出に守られて虚ろな幻想の中で生きていきたい?」 「でも……回りくどい言い方にする理由がありません」 ユノはどこか遠慮するように言葉を濁す。 そんなところにまで引っ掛かる必要はないと思うのだが、まるでどんな小さな不安の種も壊して欲しいと差し出されているような気がして、少しだけ嬉しくなった。 天秤は確実に傾いている。
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