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午後を告げる鐘の音が石造りの聖堂に響き渡り、(わず)かな余韻を残して(かす)かに振るえている。不規則な符丁(ふちょう)でどこか適当なのは、鳴らしているのがマフィンだからだろう。 礼拝堂の中央、祭壇の前に(ひざまず)き、ソリティアは閉じていた瞳を開け色ガラスを見上げた。 柔らかな太陽の光が虹色に反射して舞う様は、まるでこれからの旅路を祝福しているようだ。 この村を出る。 みんなでそう決めた。 昔を忘れる訳ではないが、思い出は思い出として、いい加減静かな眠りに就かせてあげようと納得出来たのだ。 光に手をかざし、これまでの日々を頭に描く。言葉にするのはなんだか気恥ずかしいけれど、たまにはいいだろう。 食事の前の決まり文句がこれほど実感出来たことはない。皆に感謝。世界に感謝。日々のありとあらゆるものに。 「本当に、これまであり──」 「またこんなとこでサボってる!」 礼拝堂の扉が勢いよく開かれ、ユノがつかつかと歩いてきた。
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