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ソリティアが仕事をサボって居眠りをしていたことをトマスは知っている。彼の方から居場所を告げることはないだろうが、ここは場所が悪い。
いくら信仰に欠けるといっても、旅の安全を祈願する程度にはその心を持ち合わせているのだ。ユノの方から聞かれたら礼拝堂で嘘はつけない。正直に応えるだろう。
神から無駄に不評を買うくらいならユノに恩を売る。彼は商人だ。
「ソリティアは見つかったかね?」
思う側から名前を出されてピクリと身を縮める。
「いえどこにも。まったくどこに隠れていることやら……トマスさんは祈りに来ているということはまた旅に?」
「ええ。明日にも発とうと思っています」
上手い切り出しだと思った。ユノは気付いていないだろうがこの会話は誘導されている。
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