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ユノの言葉を待っていたら、まず間違いなく「ソリティアを見なかったか」と質問をされたはずだ。トマスからあえて先に切り出すことでそれを回避し、かつ彼からユノへ語りかければ次は逆になるのが自然な流れだ。会話の内容がトマスへと移る。 嘘はついていない。真実を語っていないだけだ。 ユノへの恩と自分への借りでは、天秤はややこちらに傾いていたようで、彼の評価をもう少し見直してやっても良いのかもしれない。 「ですが……実は護衛を頼める人が見付けられずに困ってまして……」 というのも束の間、言葉の先があらぬ方向へと舵を切る。確かさっきは当てがあると言っていたはずだが、それがない? 正規の傭兵を雇えば確かに行商の利益などはふっ飛んでしまう。だからこそ、その当てが何なのかソリティアも気にはなっていたのだが……。 まさか嘘をついていたのか? という疑念が浮かび、しかしその答えはユノが示してくれた。
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