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「ほら。彼は女になんか、全然全く、これっぽちも、興味なんてないんだ!」
頭上から、勝ち誇ったような声が降ってきた。
「だって彼は、男を愛する人だから!」
……なんてことをっ!
だが、遼は顔を上げられなかった。
公衆の面前で。
男に。
口中をかきまわされるような濃厚なキスをかまされ。
……公開レイプじゃないか。
ひそひそとあちこちから、囁き声が聞こえた。
ゲイ、と聞こえたような気がする。
人々の気配が、急速に遠のいていく。
「待ってよ……」
女の子がなおもなにか言い募ろうとしている。
すると、青年の低い声が応じた。
「もうやめなよ。この人につきまとうのは、もう、やめるんだな」
はっと息を呑む気配がした。
ばしん。
何かが何かを叩く鈍い音がした。
ヒールの駆け去る音がそれに続いた。
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